学生が企業へ入社するための就職活動において、内定以外にも内々定という通知を受けることがあります。
一般的に「内定と内々定は大して変わらない」と認識されがちですが、実は大きな違いがあり、別物です。
今回は、内定と内々定の違いを踏まえ、内々定を獲得してから入社までの流れや注意点について詳しく解説します。
「就職活動で失敗したくない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
内定と内々定の違いとは
「そもそも内定と内々定は何が違うの?」という方もいるでしょう。
内定とは内々定の主な違いは、法的な拘束力の有無です。
内定は、企業と学生の間で採用条件を双方が確認し、入社に関して承諾した状態のことであり、労働契約が成立しています。そのため、企業側から一方的に就活生の採用を取り消したり拒否したりできません。
対して内々定は内定前のことであり、入社承諾書を提出していないことから、正式な労働契約は成立していない状態です。そのため、企業側から一方的な取り消しもできます。
このように内定は法的な拘束力があるのに対して、内々定は法的な拘束力が無い、いわば「口約束」のような状態です。
また、内定に関しては入社の2週間前までに学生から申し出をすれば、内定辞退ができるため、企業側への法的拘束が強いと言えます。
なぜ内々定というものが存在するのか
「企業が就活生を採用しようと考えているのであれば、すぐに内定を出せばいいのでは?」と思う方も少なくないでしょう。しかし、企業がわざわざ内々定を出すのは、国の決まりが影響しています。
日本経済団体連合会(経団連)が定めている「採用選考に関する指針」では、企業が就活生に対して正式な内定を出すのは、卒業・修了年度の10月1日以降とされているのです。
そのため、企業は9月末まで就活生に正式に内定を出せません。しかし、企業側からすれば、優秀な学生は1人でも多く入社してほしいため「10月に入ったら正式に採用をしたいと思っている」という意思表示をします。
就活生は、自身の希望と企業がマッチしている企業から内定を獲得できると分かれば、その他の企業の選考を辞退するケースがほとんどでしょう。
このように、企業は欲している人材が自社に入社してくれる可能性を高めるために、内々定というものを活用しているのです。
内々定から入社までの流れ
内々定を獲得すればそのまま企業に入社できるわけではなく、入社までにいくつか対応しなければいけない工程があります。
実際の工程は企業によって多少異なることがありますが、一般的な内々定から入社までの流れは以下の通りです。
内々定が通知される
企業の書類選考や面接などの選考を通過し、企業が就活生を採用したい場合は「内々定」を通知します。
就職活動において、企業が選考活動を行えるのは「卒業・修了年度の6月1日以降」であり、内々定の通知は6月1日〜9月30日までの間であるケースがほとんどです。
しかし、企業側の広報活動は「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」から可能であり、大手企業は3月〜5月ごろに内々定を通知し、6月以降に形だけの面接を行うケースも少なくありません。
内定の通知がされる
10月1日以降から企業側は就活生へ正式な「内定」の通知が可能になります。
入社したい企業から内定の通知が来た場合、学生は内定承諾書へのサインや押印をしなければ正式な内定とはなりません。
内定承諾書を双方で交わさない限り正式な労働契約が成立しないため、企業側からの内々定取り消しが可能です。そのため、事前に企業から内々定の通知が来ていたにもかかわらず、10月1日を過ぎても内定の通知が来ない場合は、取り消しの可能性があるため注意しましょう。
内定式や懇親会を行う
学生と企業の双方で正式に内定を承諾した後、入社までの期間に内定を獲得した学生が集まって内定式を行います。
一般的には10月1日に実施している企業がほとんどですが、企業が他の学生も採用を進めているなどのスケジュール次第では、11月の実施になることも少なくありません。
内定式で主にやることは、企業の代表者の挨拶や内定証書の授与、内定者の自己紹介、今後のスケジュールの確認などです。
また、内定者同士が入社してから少しでも早く円満な関係になれるように、内定者同士での懇親会を行います。
懇親会には既存の先輩社員が同席することも多いため、業務や職場の雰囲気など、リアルな情報収集が可能です。
入社
内定式や懇親会が終われば、いよいよ入社です。
入社当日の集合時間やスケジュールは、事前に人事部の方から書面やメールで通達されるため、しっかりと確認しておきましょう。
入社初日で遅刻は決してあってはいけないため、集合時間の15分〜30分ほど前には出社しておくことをおすすめします。
内々定を獲得した際の注意点
内々定を獲得したからと言って、油断は禁物であり、いくつか注意しなければいけない点があります。
主な例は以下の通りです。
企業から取り消されることがある
内々定は、内定と違って法的な拘束力が無いため、企業から取り消すことも可能です。
あまりにも不当なケースを除き、学生側ではどうすることもできないため、内々定を取り消されるのは避けなければいけません。
企業側から内々定を取り消される主な例は以下の通りです。
- 内々定者が罪を犯したなど社会的なモラルに反した
- 迷惑行為がSNSで拡散され世間的にマイナスなイメージがある
- 単位不足で卒業できない
- 怪我や病気で就業できない恐れがある
上記のように、入社することで企業に対してマイナスなイメージを与えてしまうケースや入社時期が遅れてしまう、通常通りに業務ができないといったケースに取り消されてしまいます。
また、内々定を獲得したからと言って、他の企業の選考をすべて辞退してしまっては、万が一内々定を取り消された際に困るのは自分自身です。そのため、必ずいくつかの企業から内々定を獲得しておき、問題なく入社できそうであれば他の企業に断るようにしましょう。
内々定の通知を書面やメールでもらう
企業から不当な理由で内々定を取り消されたとしても、企業側から「そんな通知は出していない」「学生側で勘違いをしている」と言われてしまい、証明できなければどうしようもありません。
そのため、内々定の通知は必ず書面やメールなど、形として残る物でもらいましょう。後々に証明できる状態にしておけば、万が一の時に労働相談センターなどに相談しやすくなります。
学生から辞退する際は必ず電話する
就職活動では、複数の企業の選考を同時に受けるため、企業からの内々定を取り消したいというケースもあるでしょう。
内々定を辞退する際は連絡方法に注意が必要です。
1度辞退をした企業から再度採用をしてもらうことは困難であるといっても、メールで内容だけを伝えるのは避け、必ず電話で謝罪を踏まえて連絡しましょう。
内々定を的確に把握して失敗のない就職活動を!
今回は、就職活動における内々定について、内定との違いを踏まえて獲得から入社までの流れについて紹介しました。
内々定は、内定と違い企業側からも取り消される可能性があり、必ず入社できるとは限らないため、注意が必要です。
1つの企業だけ内々定を獲得していても、万が一取り消されてしまうと、また1から企業の選考を受けなければいけなくなってしまいます。
そのため、事前に内々定についてリスクやデメリットを把握し、公開の無い就職活動にしましょう。